策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい

　社内はもちろん、取引先の人からカフェやコンビニの店員さん、果てはなぜかオフィス街の植え込みによく出没する雌猫まで、みんな彼を見ると目がハートになる。

　昨今、世間の目は女性関係のスキャンダルにたいへん厳しい。
　万が一、支社長が問題を起こしてマスコミに叩かれるようなことになれば、会社の業績にも大きく影響しかねない。

　なので、周りは支社長に一日も早く結婚して落ち着いてほしいとやきもきしている。
　けれど、本人はまったく意に介さず、自由な独身生活を満喫中。
　束縛されるのが嫌いなのか、どうやら、決まった彼女もいないらしいと、もっぱらの噂だ。

　いや、世評にたがわず、わたしも支社長のことは素敵な人だと思っている。
　
　きっちりと整えられた黒髪のショートヘア。
　きりっとした眉の下の、涼しげな目元。
　漆黒の澄んだ瞳、通った鼻筋、形のよい薄い唇。
　スーツを着こなす引き締まった体形。
　思わず目を疑うほど高い腰の位置。

　そして、たまに見せる、目をくちゃっとさせた笑顔の破壊力に、大抵の女子はキュン死するらしい。