策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
 翌朝……。
 目覚めると、真横に達基さんの顔があった。

「わっ!」
 一瞬、驚いたけど、そういえば昨晩……

「おはよう。やっと起きたな」

 そう言って、片肘をついてわたしを見つめる彼。
 寝起きのかすれ声が色気にまみれていて、その……ちょっと、つらすぎる。

「昨夜のこと、覚えてる?」
「えーと」

 路地でキスして、彼の部屋に来て、わたしが先にシャワーを浴びて……

 あれ、そのあとの記憶が……

「やっぱり、有希乃は肝が据わってるよ。男の部屋に来て爆睡できるんだから」
「わ、寝ちゃったんですね、わたし」

 前日ほぼ寝ないまま、未曾有の出来事に翻弄されまくったわたしは、電池が切れるように眠りに落ちてしまったんだろう。夢も見なかったように思う。

「ああ、俺がシャワーから戻ってきたら、すでに夢の中だったぞ」

「あの……それで」

「なんにもしてないよ。まあ、拷問に近かったけどね。やっと想いが通じた相手が横で寝てるのに、手を出せないっていうのは」

 それから、耳元に唇を寄せて囁いてくる。

「でも、寝てる間に襲うとか、そんな無体なこと、できないって。だって有希乃、初めてなんだろう?」

 ぼっと火がついたように顔が熱くなる。

「な、なんでわかるんですか……そんなことまで?」
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