策士な支社長は新米秘書を独占的に可愛がりたい
 「……有希乃、有希乃」

 彼はわたしの名前を囁きながら、きめ細やかすぎる丁寧さで愛撫し続けた。

 敏感な部分を執拗に弄られ、唇から溢れだしてしまう喘ぎ声を抑えることができない。
 
 彼が入ってきた瞬間、気づかないうちに涙を流していたらしい。
 そんなわたしの涙を唇でそっと拭いながら、彼は耳元で囁いた。

 「大丈夫? つらいのか」と。
 
 わたしは首を横に振った。

 つらかったのかも知れない。

 でもたしかに、その痛みを上回る圧倒的な喜びを、わたしは感じていた。
 彼と愛を分かち合っている、そのことに。

「大丈夫です。嬉し……涙だと……思います」
 そう、切れ切れに答えていた。
 
 その言葉を耳にしたとたん、彼は二人の身体が溶け合ってしまうのではないかと思うほど強く、わたしを抱きしめた。

 そして、言った。
 
 「一生、大切にするよ、俺の有希乃」と……

 
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