どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「もしかして……骸骨の仮面も、両のこめかみから突き出た角も、どピンクのコウモリみたいな翼も、仮装パーティーの装いではなく素のままの姿なのでしょうか」
「そうだぞ」
「あの、目のやり場に困るような際どい格好まで通常運転なのだとしたら、それこそどうかしてます」
「安心しろ。あいつは、私の目から見てもどうかしている」

 などと、私の独り言に相槌を打っていたギュスターヴですが、やがてゆったりと両腕を組んで金色頭と顔を見合わせていました。

「しかし……妙だな、ノエル。私自身も忘れていたような私の名前を、なぜ人間が知っていたのだろうか」
「記憶ごと受け継いだのではないですか? この子の器の九割は、あなたの血肉でできておりますから」

 金色頭はノエルという名前のようです。
 それにしても、さっきから血肉がどうの、と一体何なのでしょうか。

「私にも分かるように、ちゃんと説明してください」

 私が同じように両腕を組んで睨み上げると、ギュスターヴはようやく核心に触れ始めました。
 
「魔界に来るにしては、お前の魂はあまりにも無垢だった。興味本位で経緯を探ってみれば、どうやら天使の手を振り解いて落ちてきたらしいではないか。これはさぞ面白い魔物になろう、と血肉を捏ねて器を作ってやった……ということで間違いないな、ノエル?」
「ええ、おおよそは。しかし、まるで他の誰かがやらかしたかのようにおっしゃっていますが、さっきも申し上げた通り、この子の器に血肉をぶっこんだ筆頭は魔王様ですからね?」

 ギュスターヴが魔王だとして、魔界にいるということはノエルもまた魔物なのでしょう。
 しかし、むしろ天使だと言われた方がしっくりくるような風体で、小さい子にするみたいに私の頭をしきりになでなでしています。
 あまりの馴れ馴れしさに眉を顰めた私でしたが、ふと彼の手が掬い上げた髪の一房に目を止めて、ぎょっとしました。
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