どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
 しかし、ここではっと我に返ったらしい彼は、慌てて口を噤む。
 とたん、ちっと舌打ちが降ってきた。
 カリガを驚かせたのは、舌打ちの主が魔王ではなく元同僚だったことだ。

「おしかったですねぇ。もうちょっとで喋りそうだったのに」
「それはともかく、ノエル。舌打ちのような行儀の悪いこと、アヴィスの前では絶対にするなよ」
「おや、これは失礼しました。ふふ……アヴィスが見たら真似しちゃいますかね?」
「あれは生前、品行方正であることを求められすぎたせいか、今世では若干やんちゃな生き方に憧れているきらいがあるからな。いや、お転婆なのは可愛らしいが……アヴィスに舌打ちなんかされてみろ。私は泣くぞ」

 魔王、そんな理由で泣くんかい。
 思わずそう、心の中でツッコミを入れたカリガに、当の魔王が向き直る。
 彼がカリガに求めるものは、最初に相見えた時から一貫していた。

「さっさと、アヴィスに執着する理由を吐いたらどうだ」
「……あなたは知る必要のないことです」
「私の子のことで、私が知る必要のないことなどあるものか。少なくとも、貴様が決めることではない」
「あなたは……あなたはどうあっても、アヴィスを我が子と言い張るのですか……?」

 とたん、何を当たり前のことをと言わんばかりにギュスターヴが答える。
< 106 / 249 >

この作品をシェア

pagetop