どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
 ふいに、私でもドリーでも、双子のものでもない声が聞こえてきました。
 とっさに、ドリーが床に転がったままの私達を背中に庇います。
 しかし、そんな彼女の身体越しに見つけた声の主の姿に、私は驚きを隠せませんでした。

 だって……


「血に飢えたけも……?」
「アカウント名で呼ぶのはやめていただけますかしら」


 ぴしゃりと私の言葉を遮ったのは、艶やかな女の声でした。
 その声は、笑いを滲ませて続けます。


「それとも、わたくしもこう呼びましょうか? ──〝死に損ない〟ちゃん?」


 私のアカウント名をうっとりと紡ぐ声──ええ、忘れもしません。
 私の可愛いヒヨコが、修業なんかに行ってしまう原因となった者の声です。
 その名を、私達を背中に庇ったドリーが、いつになく硬い声で呼びました。

「ジゼル、どうしてここに」

 それは半月前、オフ会を装って私を屋敷へと誘き寄せ、この血を吸い尽くさんとした女吸血鬼の名です。
 ただし、今目の前にいるのは、あの屋敷で相対したような黒髪の美しい女性ではなく……

「ピンク色のコウモリだ。気持ち悪い」
「品のない色だわ。目がチカチカする」
「お黙り、お子様達」

 グライスとパルスが顔を顰めて言う通り、あの時着ていたドレスの色みたいなどピンクの──ちょうど、彼女が会員制交流場のアイコンにしていたコウモリの姿だったのです。
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