どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
27話 戦闘力はゴミ
「わたくしのことは、この際どうでもよろしいの」
どピンクのコウモリが、そうぴしゃりと言いました。
しかし、どうでもよろしいわけがないのです。
だって、ヒヨコが斬って斬って斬りまくっても再生してきた彼女でしたが、最終的にはギュスターヴによって細切れにされ、さらに屋敷に溢れかえっていた手下ともども焼き尽くされたはずなのですから。
魔王でも滅ぼせないなんて、まさか不死身だとでも言うのでしょうか。
私もドリーも訳がわからない心地でしたが、それよりも、とジゼルは続けました。
「そこの子供達、再度お尋ねしますわ。どこでこれを知ったんですの?」
彼女はそう言って、どピンクの皮膜にちょこんと付いた爪の先で床を指します。
床の上には、何やら魔法陣のようなものが描かれていました。
そういえば、魔王城で私達が謎の光に包まれた際も、足下の床には同じようなものが現れたように記憶しています。
それに心当たりがあるかと私が問いますと、胡散臭そうにジゼルを見ていたグライスとパルスはこくりと頷きました。
「ついさっき、あるひとに教えてもらったんだよ」
「あるひと……とは、どなたでしょうか?」
「知らないひと。でも、これでアヴィス姉様に会えるって」
「まあ……」
双子の証言に、私はドリーと顔を見合わせて首を傾げます。
一方、ジゼルはパタパタと皮膜を羽ばたかせて魔法陣の上と飛び回りながら呟きました。
「これは、召喚用の魔法陣ですわ。ですが、媒介がなければ何も呼び出すことができないはずなのですけれど……」
それを聞いたグライスとパルスのそっくりな顔が、私を見上げて言います。
「媒介には宝石を使ったんだよ。トニーからもらった、赤いやつ」
「アヴィス姉様からいただいたものだけど、自分にはもったいないからって、私達にくれたの」
「そうだったの、トニーが……」