どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「それよりも、ノエル。貴様さっき、コレの九割が私の血肉と言ったな。では、残りの一割は何だと言うのだ」
「私と、たまたま近くにいた数匹の魔物の血肉ですね。面白そうなので便乗しました」
「なんだと? 貴様、ふざけた真似を。変なものを混ぜるんじゃない」
「変なものとは失礼な。それに、仕方がないじゃないですか。我々だって、魔王様に負けず劣らずベロンベロンだったのですから」

 ぎゃあぎゃあといい年をした男達が言い合うのに、私はしばし呆気にとられます。
 しかし、やがてふつふつと腹の底から湧き上がってくるものがありました。
 怒りです。

(魔王だか魔物だか知りませんが……ひとの魂を何だと思っているの)

 酔いに任せて作り上げた魔物の血肉の器に、無力な人間の魂を好き勝手に押し込めておいて、想定外だの領分じゃないだのと、まったくもって言い訳がましい。
 口を閉じていろというものです。

「……」

 ペチンッ、と乾いた音が響きました。
 肩を抱いていたギュスターヴの手を、私がはたき落とした音です。
 相変わらず遠巻きに見守っていた連中がどよめきますが、知ったことではありません。
 キッと睨み上げると、ギュスターヴとノエルはようやく愚にも付かない言い合いをやめました。

「んん? もしかして、怒っているのか?」
「もしかしなくても、怒っているようですね」

 目を丸くする彼らを、周囲を取り巻く魔物達を、ぐるりと見回します。
 そうして──私の口は、今まさに満を持して発っするのです。
 毒入りワインを飲まされたあの時、グリュン城の大広間に集まっていた連中にこそぶつけたかった、この言葉を。
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