どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
 ふらふらしていた成れの果てが、いきなり前大臣に襲いかかりました。
 ジゼルに吸血鬼もどきにされた上、元々金で雇われただけの傭兵ですもの。忠誠心も何もありません。
 耳をつんざくような悲鳴を上げて暴れる前大臣に、他の成れの果てが我も我もと群がりました。
 あらあら、大人気ですね。

「うふふ、浅ましいこと」

 いつの間にか私の肩に戻っていたジゼルが、舌なめずりをしながらそれを笑います。
 たっぷりと血を飲んだようで、彼女のお腹はぽんぽこになっておりました。
 私は私で、何やら鼻の奥がムズムズしますが一体何事でしょう。
 さすがに、こんなどシリアスな場面で鼻水を垂らしては沽券にかかわりますから、全力ですすっておきましょうね。ずびー。
 そんな私を何やらうっとりとした顔で長め、ジゼルはまたもや舌なめずりをしました。

 やがて、前大臣の悲鳴も聞こえなくなりました。
 廊下での騒ぎに気付いて真っ先に彼が飛び出してきたところを見ると、客間に手下を入れていなかったのでしょう。
 ということは、中に残っているのは……

「いったい、何が起こっているの……?」

 茶色い髪と青い瞳の女性がいかにも戦々恐々といった様子で客間から顔を覗かせました。
 とたん、私の顔に笑みが溢れます。
 
「義姉様!!」
「……え……アヴィ……ス?」
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