どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
第四章 魔王の子と魔女の子
34話 解約できません
大きいばかりで飾り気のないベッドに、目が痛くなりそうなほど真っ白いシーツ。
天蓋から垂れ下がるカーテンも、白。
この真っ白い世界で眠るのは、神とは対なす存在──魔王である。
しかし、恐れ多くもその頬を、ペチペチと叩く手があった。
白くたおやかな少女の手だ。
「ギュスターヴ……ギュスターヴ、お願いです。起きてください」
珍しく焦りを帯びたその声に、銀色の長いまつ毛の下から鮮やかな赤が顔を覗かせる。
ベッドに仰向けに寝転がった魔王ギュスターヴは、自分の腰を跨いで馬乗りになっている相手を見上げて緩慢に口を開いた。
「……おはよう、アヴィス」
「おはようございます……って、のんきに挨拶をしている場合ではないのです、ギュスターヴ。たいへんです一大事です緊急事態です」
「分かった分かった……いや、まだ五時ではないか」
「だから、緊急事態だと言っているではありませんか」
普段より五時間も早く起こされたことに、ギュスターヴはやれやれとため息をつくが、だからといってアヴィスを責めるつもりはないようだ。
アヴィスの方もそれを分かっているため、少しも悪怯れる様子はない。
「ギュスターヴ、たいへんなんです」
「うむ、どうした」
彼女は寝転がったままのギュスターヴの胸に両手を突くと、ぐっと身を乗り出して続けた。
天蓋から垂れ下がるカーテンも、白。
この真っ白い世界で眠るのは、神とは対なす存在──魔王である。
しかし、恐れ多くもその頬を、ペチペチと叩く手があった。
白くたおやかな少女の手だ。
「ギュスターヴ……ギュスターヴ、お願いです。起きてください」
珍しく焦りを帯びたその声に、銀色の長いまつ毛の下から鮮やかな赤が顔を覗かせる。
ベッドに仰向けに寝転がった魔王ギュスターヴは、自分の腰を跨いで馬乗りになっている相手を見上げて緩慢に口を開いた。
「……おはよう、アヴィス」
「おはようございます……って、のんきに挨拶をしている場合ではないのです、ギュスターヴ。たいへんです一大事です緊急事態です」
「分かった分かった……いや、まだ五時ではないか」
「だから、緊急事態だと言っているではありませんか」
普段より五時間も早く起こされたことに、ギュスターヴはやれやれとため息をつくが、だからといってアヴィスを責めるつもりはないようだ。
アヴィスの方もそれを分かっているため、少しも悪怯れる様子はない。
「ギュスターヴ、たいへんなんです」
「うむ、どうした」
彼女は寝転がったままのギュスターヴの胸に両手を突くと、ぐっと身を乗り出して続けた。