どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
私が死んだ一月余り前はまだ立太子もしていなかったエミールですが、すでにグリュン国王として立っていると言います。
ということは、私がグリュン城を訪ねた時、雪に覆われた庭に首だけ出して埋まっていた前国王の行く末は聞くまでもないでしょう。
「僕は本当に、どうしてここにいるのかな? 死んだ覚えはないんだけど……」
エミールは私の記憶にあるものより少し伸びた前髪をかき上げつつ、初めて見るような疲労を滲ませた顔でそう呟きます。
私はとっさに、熱がないか確かめるため彼の額に手を当てようとして……
「あら……触れられない……?」
「みたいだね。今の僕は、魂だけの状態なのかもしれないよ。なにしろ──こんなだし」
こんな、とエミールが指差した彼の足下を見て、私はぎょっとしました。
だって、エミールに足がなかったのです。
なんということでしょう。典型的な幽霊のフォルムではありませんか。
記念に写真を撮っておきましょうね。
もちろん、心霊写真を撮るのは初めてのことです。
いそいそと端末を起動して幽霊エミールを写真に収めていた私でしたが、ここでまたはっとします。
「もしかして、早く身体に戻らないとまずいのでは? このままでは、本当に死んでしまうんじゃありませんか?」
「さあ、どうだろうね。死んだことがないから分からないなぁ」
「死んだことがある私にも分かりません。こうなったら、分かりそうな人に聞きに行きましょう」
「それって……誰に?」
首を傾げるエミールを見上げ、私はきっぱりと告げました。
「ギュスターヴ──魔王です」
ということは、私がグリュン城を訪ねた時、雪に覆われた庭に首だけ出して埋まっていた前国王の行く末は聞くまでもないでしょう。
「僕は本当に、どうしてここにいるのかな? 死んだ覚えはないんだけど……」
エミールは私の記憶にあるものより少し伸びた前髪をかき上げつつ、初めて見るような疲労を滲ませた顔でそう呟きます。
私はとっさに、熱がないか確かめるため彼の額に手を当てようとして……
「あら……触れられない……?」
「みたいだね。今の僕は、魂だけの状態なのかもしれないよ。なにしろ──こんなだし」
こんな、とエミールが指差した彼の足下を見て、私はぎょっとしました。
だって、エミールに足がなかったのです。
なんということでしょう。典型的な幽霊のフォルムではありませんか。
記念に写真を撮っておきましょうね。
もちろん、心霊写真を撮るのは初めてのことです。
いそいそと端末を起動して幽霊エミールを写真に収めていた私でしたが、ここでまたはっとします。
「もしかして、早く身体に戻らないとまずいのでは? このままでは、本当に死んでしまうんじゃありませんか?」
「さあ、どうだろうね。死んだことがないから分からないなぁ」
「死んだことがある私にも分かりません。こうなったら、分かりそうな人に聞きに行きましょう」
「それって……誰に?」
首を傾げるエミールを見上げ、私はきっぱりと告げました。
「ギュスターヴ──魔王です」