どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「魔王様! その汚らわしい魔女を、即刻魔界から追放してください! 魔界の風紀を乱す大罪人です!」
「風紀なぁ……魔界にそんなものあったか?」
「あっても、乱してなんぼって感じですよね」

 本来なら、今日の会議はドラゴン族も長が出席してしかるべきだが、ウルスラと通じたことが妻にバレてボッコボコにされてしまったため、代理として娘が出席したのだ。
 しかし、自分よりも──ドラゴン族よりも相手が格上であることは席順を見れば一目瞭然にもかかわらず、口汚く罵ってしまうところを見ると、彼女はあまりにも未熟過ぎる。
 そのため、ギュスターヴにもノエルにもまったく相手にされず、クラーラは悔しそうに唇を噛んだ。
 魔女はそれをからからと笑って一蹴する。
 
「安心おしよ。そもそも私は、お前さんの父親個人になど微塵も興味はない」
「なんですって!?」
「一番強いドラゴンの子がほしかったから、族長の種をもらった──ただそれだけのことよ」
「よくも、ぬけぬけと……!」

 魔女はかねてより、夫も恋人もいらないが子供だけほしいのだと公言していた。
 彼女はとにかく子供が好きで、母性だけが振り切っているのだ。
 そういうわけなので、多種多様な種族との間に子供を儲けており、その数はすでに百人を超えていた。
 身近で言うと、城門を守っているガーゴイルも、実は彼女の息子だったりする。
 そんな子沢山な魔女は、ふいにぽつりとこうこぼした。

「魔王の子も、一人くらい産んでみたかったけどねぇ……」

 これを耳聡く聞きつけたクラーラが、なんですって!? と、また目を三角にする。
 一方、何の反応も寄越さないギュスターヴを流し見て、ウルスラは続けた。

「この際、別の女が産んだものでもいいから、お前さんの子を育ててみたいんだが?」
「私の子は私が育てる。貴様の出る幕などない。そもそも、だ。私の子を産める母体自体が存在しない」

 にべもなく一蹴されるも、魔女は怯まない。
 それどころか不敵に笑って言うのである。
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