どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「てめぇ、何者だ!」
「ぶっ殺すぞ!」
「そいつを返しやがれ!」

 ……前言撤回です。
 ドラゴン達は、やはり初見の印象通りに粗野な輩でした。
 品性のかけらもないその言い草に、ぞっとします。
 彼らの怒号に驚いたのか、幼子がぎゅっとしがみついてきました。
 私はそれをしっかりと抱き返すと、後ろを振り返らずに駆け出します。
 そうして、もう少しで古木のおばあさまの袂に辿り着くという時でした。

「おんなぁ! 誰だか知らねえが、ふざけやがって!!」
「てめえも、そのガキごと葬ってやらぁ!!」
「ドラゴン族に逆らった報いだっ!!」

 ドスドスと追いかけてきたドラゴン達の鋭い爪が、私を背中から引き裂こうとしたのです。

「アヴィス!」
「アヴィちゃん!」

 エミールとガーゴイルが、顔を強張らせて私の名を叫びました。
 それにしましても、私と目を合わせたこともなかったくせに、いきなりちゃん付けで呼んできた後者には驚きです。距離感がバグっているんでしょうか。
 幼子が、両手を背中に回してしがみついてきました。
 私は片手でそれを抱え直し、腰に提げていた武器──門番の大腿骨略してモンコツを握ります。
 そうして、ドラゴンの爪に応戦すべく振り返ろうとした時でした。
 ひゅっ、と空気を切り裂く音が聞こえたかと思ったら……
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