どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「エミール……?」
エミールは、愕然とした表情をしていました。
その空色の瞳が凝視するのは、私ではありません。
私を抱き締めたままのヒヨコでした。
元々白かったエミールの顔色は、いまや紙のように真っ白になっています。
その形の良い唇からは血の気が失せ──霊体なので、当然と言えば当然ですが──わなわなと震えています。
けれども、それもわずかな間だけでした。
突然カッと両目を見開いたかと思ったらみるみる顔が赤くなり、その表情は憤怒に染まったのです。
「なんで……っ、なんでなんで! なんでだよっ!!」
「エ、エミール、落ち着いて……」
「どうしてお前がここに──どうして、僕を差し置いてアヴィスの側にいるんだっ!!」
「えっ……?」
突然喚き始めたエミールに、私を抱き締めたままのヒヨコが怯えたようにビクリと震えました。
新グリュン国王と謎の屍剣士は、どうやら面識がある様子です。
前回私がグリュン城の国王執務室へエミールを訪ねた折、ヒヨコも後から兄と一緒に転がり込んできました。
とはいえ、直後に乗り込んできたギュスターヴの印象が鮮烈だったこともあり、あの時エミールとヒヨコがどれほどお互いの存在を認識できたでしょう。
そもそも、今のエミールの言動から推測すると……
「エミール……あなたもしかして、この子のことを前から知っているの?」
「何言ってるの、アヴィス! 知っているも何も、だって、そいつは──」
霊体のくせに顔を真っ赤にして、むしろ生き生きとしたエミールが、ビシリとヒヨコを指差し言い募ろうとした、その時でした。
「……おのれっ……焼き殺してくれるっ!!」
ヒヨコの双剣に切り伏せられ、地面に転がっていたドラゴンの一匹が、突然頭をもたげて叫んだのです。
かろうじて息があったらしいそいつは裂けんばかりに大きく口を開き、巨大な火の玉を吐き出しました。
最初に追いかけていた幼子か、それを担いで逃げた私か、それとも自分たちを切ったヒヨコか。
あるいはその全員を狙ったのかもしれません。
とはいえ、ヒヨコが即座に私達を抱えたまま飛び退いたことで、ことなきを得ました。
火の玉の軌道にいたエミールとガーゴイルも、すんでのところで避けます。
それにほっとしたのも束の間でした。
なおも勢いよく飛んでいく火の玉の先にあったのは、避けようにも避けられない存在──
エミールは、愕然とした表情をしていました。
その空色の瞳が凝視するのは、私ではありません。
私を抱き締めたままのヒヨコでした。
元々白かったエミールの顔色は、いまや紙のように真っ白になっています。
その形の良い唇からは血の気が失せ──霊体なので、当然と言えば当然ですが──わなわなと震えています。
けれども、それもわずかな間だけでした。
突然カッと両目を見開いたかと思ったらみるみる顔が赤くなり、その表情は憤怒に染まったのです。
「なんで……っ、なんでなんで! なんでだよっ!!」
「エ、エミール、落ち着いて……」
「どうしてお前がここに──どうして、僕を差し置いてアヴィスの側にいるんだっ!!」
「えっ……?」
突然喚き始めたエミールに、私を抱き締めたままのヒヨコが怯えたようにビクリと震えました。
新グリュン国王と謎の屍剣士は、どうやら面識がある様子です。
前回私がグリュン城の国王執務室へエミールを訪ねた折、ヒヨコも後から兄と一緒に転がり込んできました。
とはいえ、直後に乗り込んできたギュスターヴの印象が鮮烈だったこともあり、あの時エミールとヒヨコがどれほどお互いの存在を認識できたでしょう。
そもそも、今のエミールの言動から推測すると……
「エミール……あなたもしかして、この子のことを前から知っているの?」
「何言ってるの、アヴィス! 知っているも何も、だって、そいつは──」
霊体のくせに顔を真っ赤にして、むしろ生き生きとしたエミールが、ビシリとヒヨコを指差し言い募ろうとした、その時でした。
「……おのれっ……焼き殺してくれるっ!!」
ヒヨコの双剣に切り伏せられ、地面に転がっていたドラゴンの一匹が、突然頭をもたげて叫んだのです。
かろうじて息があったらしいそいつは裂けんばかりに大きく口を開き、巨大な火の玉を吐き出しました。
最初に追いかけていた幼子か、それを担いで逃げた私か、それとも自分たちを切ったヒヨコか。
あるいはその全員を狙ったのかもしれません。
とはいえ、ヒヨコが即座に私達を抱えたまま飛び退いたことで、ことなきを得ました。
火の玉の軌道にいたエミールとガーゴイルも、すんでのところで避けます。
それにほっとしたのも束の間でした。
なおも勢いよく飛んでいく火の玉の先にあったのは、避けようにも避けられない存在──