どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
43話 プンスコお父さん再び
「ドラゴン族と魔女の問題に、私は一切口を挟むつもりはない」
唐突に魔女の名前が出てきたことを不思議に思いつつ、すっかり眠気が吹き飛んだ私はふかふかのマントから顔を上げました。
「殺し合いたければそうすればいい。まあ、ドラゴン族が滅ぶだけだろうが」
私を抱いたままのギュスターヴが一歩進むと、ドラゴン娘は二歩三歩と後退ります。
その顔色は、もはや紙のようになっていました。
「そうなろうとも、私は関与しない。連綿と続く魔界の歴史の中、滅んだ種族など腐るほどあるからな。私はそれを、淘汰と呼ぶ」
明日の天気を話題にしているような調子で、冷徹な言葉が続きます。
彫刻のごとく美しいギュスターヴの顔には、何の感情も乗っていないふうに見えました。
しかし直後のこと、それは突如として一つの感情に支配されます。
「だが、私の子を害そうというのならば、話は別だ。貴様の言葉になぞらえるならば──問答は無用、だな」
怒りです。
赤い瞳の奥で、さっき古木を焼き尽くしたドラゴンのものをよりもさらに苛烈な炎が燃え上がりました。
「魔女の手で淘汰されるのを待たず、私が排除してやろう」
淡々とした声とは裏腹に、全身からは凄まじい怒気が迸っております。
それに当てられたドラゴン娘は、ヘナヘナとその場にへたりこんでしまいました。
その瞳はうるうるになっていて、解約引き留め画面に出てきた可哀想な猫ちゃんやワンちゃんを彷彿とさせます。
周囲には大勢の観衆がおりますが、誰も口を挟もうとしませんでした。
ギュスターヴがさらにもう一歩、足を進めます。
「ひ……っ!!」
彼のブーツの踵がガツッと音を立てたのと、ドラゴン娘が喉の奥で引き攣った悲鳴を上げたのは同時でした。
そして……