どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「今日はもうお帰り。そして、ここであったことをつぶさに父親に伝えるんだね」
「わ、私に指図するなっ……!」
「同胞の遺骸を回収するのを忘れずにな。魔王の子が介入していなければ、叶わなかったことだ。もしも彼らがうちの子に触れていたら、木っ端微塵になっていただろうからね」
「な、なな……なによ、それ……」

 魔女は、幼い我が子を無防備に一人にしたわけではなかったようです。
 曰く、害意を持つ者が幼子に触れれば、即座に爆発する呪いをかけていたのだとか。
 問答無用ここに極まれり。
 ドラゴン娘も、これには言葉を失いました。
 観衆もぎょっとして、慌てて魔女親子から距離をとっています。
 一方、ノエルやジゼル、オランジュや鳥っぽい魔物、プルートーにキロンに人狼といった、さきほど会議室で円卓を囲んでいた面々は動じる様子はありません。
 ギュスターヴも当然、ドラゴン娘や観衆とは違う反応をしました。

「なるほどその手があったか、って思っている顔ですね、ギュスターヴ」
「なるほどその手があったか、と思っているからな。しかし、あいにく私は魔女ほど呪いに精通していない。お前に触れた者を全員木っ端微塵にする、とかなら簡単なのだが……」

 自分に触れる者がことごとく吹っ飛ぶような仕様にされたら心を病んでしまいそうなので、全力でごめん被りたいところです。
 人間として一度死に、魔界で与えられた新たな体を、私自身結構気に入っているのです。
 この手で、触れたい者もたくさんいます。
 例えば、私のために強くなって帰ってきたヒヨコや、霊体ではないエミール。
 出会って一月余り経ってようやく会話ができたガーゴイルの、あのゴツゴツした体も触ってみたいですね。
 そんなことを考えつつ、私は会話の対象を変更します。
 魔王から魔女──ではなく、その腕の中にいる幼子へ。
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