どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「何か、私にご用がおありでしょうか?」
なにしろ、ずっと熱視線を送られていたのです。
私と目が合うと、幼子は丸い頬を薔薇色に染めて意気揚々と口を開きました。
「お、おれは、くりす……くりすとふぁー。さっきは、たすけてくれて、ありがとう!」
「どういたしまして。クリス、と呼んでもかまいませんか?」
「う、うん! おれも、あゔぃすって、よんでいい?」
「もちろんです」
幼子あたらめクリスは、男の子のようです。一人称が〝おれ〟なのは少し以外でした。
舌足らずな声は愛らしく、私は自然と微笑みを浮かべましたが、ギュスターヴは無感動に彼を眺めています。
クリスは魔王の視線に怯える様子もなく、小さな両手をもじもじさせながら続けました。
「あのね、おれね、ひとつきまえに、たまごからでてきたのよ」
「あら、一月前に魔界で誕生したのでしたら、私と同じですね」
「どくしん、です」
「それは知ってます」
クリスはここで、小さな手を私に差し伸べてきました。
そうして、母親譲りの金色の瞳をキラキラさせて言うのです。
「あ、あのね、あゔぃす──おれと、けっこんし……」
「──ならん」
拙い言葉を遮ったのは、自称〝アヴィスのお父さん〟でした。
ギュスターヴは同時に、こちらに伸びてきたクリスの手を軽く払います。
その瞬間でした。
パンッと音を立てて、クリスに触れた魔王の右手が弾け飛んだのです。
なにしろ、ずっと熱視線を送られていたのです。
私と目が合うと、幼子は丸い頬を薔薇色に染めて意気揚々と口を開きました。
「お、おれは、くりす……くりすとふぁー。さっきは、たすけてくれて、ありがとう!」
「どういたしまして。クリス、と呼んでもかまいませんか?」
「う、うん! おれも、あゔぃすって、よんでいい?」
「もちろんです」
幼子あたらめクリスは、男の子のようです。一人称が〝おれ〟なのは少し以外でした。
舌足らずな声は愛らしく、私は自然と微笑みを浮かべましたが、ギュスターヴは無感動に彼を眺めています。
クリスは魔王の視線に怯える様子もなく、小さな両手をもじもじさせながら続けました。
「あのね、おれね、ひとつきまえに、たまごからでてきたのよ」
「あら、一月前に魔界で誕生したのでしたら、私と同じですね」
「どくしん、です」
「それは知ってます」
クリスはここで、小さな手を私に差し伸べてきました。
そうして、母親譲りの金色の瞳をキラキラさせて言うのです。
「あ、あのね、あゔぃす──おれと、けっこんし……」
「──ならん」
拙い言葉を遮ったのは、自称〝アヴィスのお父さん〟でした。
ギュスターヴは同時に、こちらに伸びてきたクリスの手を軽く払います。
その瞬間でした。
パンッと音を立てて、クリスに触れた魔王の右手が弾け飛んだのです。