どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
44話 ふたりはママ友
「いやぁあああ!!」
耳をつんざくような悲鳴を上げ、足下にへたりこんでいたドラゴン娘が飛び上がりました。
彼女はそのまま、他にも同行していたらしい従卒のドラゴンとともに、同胞の遺骸を抱えて魔王城から逃げ出します。
まさしく這う這うの体といった姿に、魔女を含めた会議室にいた面々は苦笑いを浮かべました。
その他の観衆はドン引きです。
ズサササッ、と音を立てて一気に後退りました。
なにしろ、魔女の呪いがはったりではないことを、魔界の頂点が証明してしまったのですから。
クリスに触れたギュスターヴの右手が弾け飛ぶ瞬間を、この場に居合わせた全ての者が目撃したのです。
取り分け間近で目の当たりにした私は、とっさに彼の首筋にしがみつきました。
シャッ、と近くで鞘走る音が聞こえます。
ヒヨコが剣を抜いたと私が悟るのと、しがみついた首筋の奥で声帯が震えるのは同時でした。
「──やめろ。貴様が木っ端微塵になれば、アヴィスが悲しむ」
「……」
ヒヨコはしばし逡巡する気配がありましたが、ほどなくチンと剣を鞘に戻す音が響きます。
ギュスターヴの喉が、吐息のような笑いで震えました。
「安心しろ。私の目の黒いうちは、アヴィスを嫁になど出さん」
何やら勝手なことを言っています。
ますますしがみつく私の頭を、ギュスターヴがのんきに撫でてきました。
今しがた弾け飛んだはずの、右手で。