どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「しかし、画面上ではただのアイコンでしかないというのに、これが我が子だと思うとなんとも愛らしく見えるものだな」
「はあ……あなた、本当にあの子の親を気取るつもりなのですね? そんなに子供が可愛いなら、さっさと作ればよろしかったのに」
「口を慎め、ノエル。出産とは命懸けの仕事だぞ。自分が産むわけでもないくせに簡単なことのように言うな」
「これは、失礼しました。全国のお母様方に謝ります。ごめんなさい」

 虚空に向かって謝る側近を一瞥してから、魔王が続ける。

「そもそも、この私の魔力を受け継ぐ子供を宿すに耐え得る母体が、そうやすやすと見つかるものか。千年生きた魔女でさえ、不可能だったんだぞ?」
「なるほど……それではあの子は正真正銘、あなたと血肉を分けた希少な存在ということになるのですね」

 アヴィスを示すアイコンは、しばらくは魔王城の門を出たところで止まっていた。
 寝起きの魔王と堕ちた天使はそれをほのぼのと眺めていたが、やがてアイコンが活動を始める。
 おや、と後者が口を開いた。

「えーっと……気のせいでしょうか? 一直線に魔界の出口に向かっているように見えますが……」
「……ん? いやいや、生まれたてほやほやのアレが魔界の地理に詳しいはずが……誰かが門の場所を教えたのか?」
「魔王様が与えた携帯端末で調べたんじゃないですか? 子供って好奇心旺盛ですから、すぐにカラクリを使いこなすようになりますよ」
「なるほど……しかし、出口に辿り着いたところで、あそこには門番がいるだろう。あいつがそうやすやすと通すはずがない」

 とは言いつつ、ギュスターヴもノエルも、何だか嫌な予感を覚えていた。

 そうして、嫌な予感というのはだいたい当たるのだ。
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