どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
 同じ悩みを抱えながら懸命に子供を育てているスレ民達の間には、年代も人種も、時には性別も越え、強い連帯感が生まれているのである。

「スレでの私は〝888くん〟と呼ばれ、愛されキャラをやっている」
「あっ、意外と長い間、発言するの我慢していたんですね。その数字は狙って取ったんです?」

 育児板では現実の肩書きなど意味をなさず、魔王さえも名もなきスレ民でしかない。
 最も権力を持っているのは、彼を擁護してくれたボスママことスレ主だった。
 なお、最初のスレはとっくの昔に千を超え、現在は四つ目のスレが展開されている。

「ボスママは現在第二子妊娠中なのだが、夫が出会い系で浮気しまくっているのが発覚してな。スレは目下、夫をどう料理しようかという話で持ちきりだ」
「育児板ですよね? 思いきりスレ違いでしょうに」
「スレ民全員、多かれ少なかれ夫に不満があるのだろう。嬉々として、ボスママの夫を地獄に突き落とす算段を立てている」
「くわばら、くわばら……」

 当然のように、ギュスターヴも不貞夫にお仕置きする気満々である。
 何なら育児よりも得意な分野なので、ノリノリである。
 ボスママは最強の味方を、夫は最悪の敵を作ってしまったというわけだ。
 ノエルが思わず後者に同情しかけたところで、ギュスターヴは大真面目な顔をして続ける。

「不貞男を去勢させるシステムの話に戻るが」
「システム化させる気なんです? 本当に問答無用ですね。しかし、不貞を働くのは何も男ばかりではないでしょう。不公平ではありませんか?」
「逆に聞くが、長く生きている貴様の目から見て、この世が不公平でなかったことなどあったか?」
「ないですねぇ」

 即答した元神の御使いを鼻で笑い、魔王は執務机に頬杖を突いた。
< 202 / 249 >

この作品をシェア

pagetop