どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「強制去勢システムを導入するのはいいとして」
「……いえ、一瞬相槌打ちそうになりましたけど、やっぱりよくないですってば」
「ところ構わず千切れたアレが転がっていては、公衆衛生上問題がある。アヴィスの教育にもよくないしな」
「それはごもっとも」

 あちこちにアレが転がっている光景を想像したノエルはぞっとし、それが何かわかっていないアヴィスが棒でツンツンしている場面を思い浮かべたギュスターヴは眉間に皺を寄せた。

「というわけで、不貞を働いた瞬間、そいつのアレだけ異世界に転移する仕様にしようと思うんだが」
「最低最悪のファフロツキーズですね。アレが続々とやってくる異世界の方々が気の毒すぎて、同意いたしかねます」
「それがだな、魚類の精巣をありがたがって食う世界線もあるらしいのだ。そこなら喜ばれるに違いないぞ」
「いや……いやいやいや! 絶対に違う、と私の中の何か激しく訴えてきますよ!」

 堕天使であるにもかかわらず、ノエルは思わず天を仰ぎたくなった。
 たちの悪い冗談にしか聞こえないが、魔王が大真面目に話を進めようとしていることを、それこそ気が遠くなるほど長い付き合いの彼は確信しているからだ。
 魔界において、魔王の決定は絶対である。
 誰かにとって不公平でも理不尽でも、世界単位で多大な迷惑をかける可能性があろうとも、関係ない。
 それを心得ているノエルは、アレを送り付けられる異世界とやらの住人に同情することしかできなかった。
 ところがここで、不貞夫絶対去勢させるマンの気勢を削ぐ出来事が起こる。
 執務机に放り出していた、彼の携帯端末が鳴ったのだ。
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