どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「アヴィス、あーそーぼっ!」
「アヴィス! 生肉食いにこない?」
私を遊びに誘うのは、真っ黒い髪、真っ黒い服、真っ黒いとんがり帽子、さらにはコウモリみたいな翼を持つ小さな男の子、クリスことクリストファーです。
彼は、私がこの魔界で生まれ変わったのと同じ頃──おおよそ一月半ほど前に卵から孵った、魔女ウルスラとドラゴン族長の不義の子なのだとか。
初めて会った十日前に比べていくらか言葉遣いが流暢になったクリスが、私とヒヨコに向かって大きく手を振ります。
ちょうどその時、一匹のモブ魔物が門を潜ろうとしていました。
魔界の門番プルートーみたいな、骸骨の姿をしたやつです。
ちなみに、プルートーの左大腿骨は引き続き私が所有しており、今も腰のリボンに差して装備しております。
クリスの手は、そんなプルートー似の魔物にぶつかってしまいました。
「いってーな! このガキ! 何しやがるっ!」
名もなき骸骨が、眦……いえ、眼窩を吊り上げてクリスに絡み始めます。
ちょっと手がぶつかっただけですのに、こんなにイライラしてしまうなんて、カルシウムが足りていないのではないでしょうか。骨のくせに。
クリスの父親違いの兄に当たるらしいガーゴイルが、慌てて骸骨を宥めようとしましたが──手遅れでした。
「おい! ガキだからって、許されると思ったら大間違……」
喚き散らしながら、骸骨がクリスの肩を掴んだ瞬間です。
バンッ! という大きな音とともに、そいつの体が爆発してしまいました。
バラバラになった骨が四散します。
私の方にも勢いよく飛んできましたが、すかさず前に躍り出たヒヨコが払い落としてくれました。
あわあわしているガーゴイル兄をよそに、元凶たるクリスは平然として言います。