どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「静かになったね」
クリスには、害意を持ってその身に触れる者を木っ端微塵にする、などという前代未聞の呪いがかけられていました。
今回は、相手が骸骨で本当によかったと思います。
そうでなければ、肉片やら体液やら臓物やらが飛び散って、えらいこっちゃになっていたでしょうから。
「クリスのこの呪いに関しては、早急に周知徹底されるべきですね。後始末に駆り出される方々が気の毒ですもの」
どこからか集まってきた犬達が、バラバラになった骨を咥えて散っていきました。
またいつか、一つになれる日がくるといいですね。
私は気を取り直し、ヒヨコとともに門の前まで歩を進めました。
「アヴィス! ねえねえ、遊ぼっ!」
「ごきげんよう、クリス。ここまで一人で来たのですか?」
「アヴィスも生肉好きだよねっ!」
クリスが駆け寄ってきて、ヒヨコと繋いでいない方の手を握ってきます。
周囲を行き交う魔物達は、今しがたの骸骨の末路を目にしたため、クリスと平然と触れ合う私にぎょっとした様子でした。
しかし、こんな幼子に対して害意を抱くはずもありませんので、呪いなど恐るるに足りません。
私がやんわりと手を握り返すと、クリスは顔を輝かせて言いました。
「あのね、アヴィスと遊びたいって言ったら、ママが送ってくれたの!」
「そうですか、魔女の方が」
「アヴィス、何の生肉好き? オレ、ブタのが好き!」
「アヴィスのパパにラインしたけど、返事こないって!」
「私のパパ……ではありませんが、ギュスターヴでしたら今さっき起きたばかりです。まだ携帯端末を見てもいないのではないでしょうか」
「魔王様? 魔王様はね、トリの生肉好きだよ! たぶん!」
魔王ギュスターヴと魔女ウルスラ──魔界の頂点と次点は、前者の側近であるノエルが堕天してくるよりも前からの付き合いだといいますのに、連絡先を交換したこともなかったのだとか。
それが、私とクリスがお友達になったのをきっかけに、先日やっと彼らもお互いをお友達追加してグループを作ったのだそうです。
保護者達がどんなやりとりをしていようと、私にとっては知ったことではありませんが。
「それでクリス、今日は何をして遊びますか?」
地界で人間をやっていた時は、グリュン王国第一王子エミールの婚約者として、毎日分刻みのスケジュールで生きていましたが、今の私には何の義務も責任もありません。
グリュン国王として忙しい毎日を送っているらしいエミールには申し訳ありませんが……毎日遊んで暮らせるというのは、素晴らしいですね。
強欲な第二王妃と公爵の期待を背負わされ、窮屈な毎日を送っていたジョーヌ王子なんて、自由を知らないまま死んでしまって本当に気の毒です。
私がしんみりとしていると、同じく毎日が休日の幼子が、もじもじしながら言います。
「えっとね、おままごとがしたいの。ヒヨコが子供で、おれがお父さん! アヴィスはおかあ……」
「利き生肉して遊ぼっっっ!!」