どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
49話 コロコロ子狼の悲劇
「私の子を噛んだのは、どいつだ」
──血を流したな?
その問いに対して答えを返さないうちに、ギュスターヴはやってきました。
指摘された通り、私は彼との通話中に傷を負い、右の前腕から流血しております。
おかげで、現在地を伝える手間が省けましたね。
この自称〝アヴィスのお父さん〟は、たった一滴でも私が血を流すとやってきてしまうのですから。
今回の傷は、噛まれてできたものでした。
「ジゼル、離れろ」
「いやですわぁ!」
なお、傷口にはギュスターヴとほぼ同時にやってきた吸血鬼ジゼル──どピンクのコウモリが張り付いております。
私の血が大好きらしい彼女も、流血に気づいて飛んできたようです。
眉を撥ね上げたギュスターヴはジゼルを引き剥がしますと、私を軽々抱き上げます。
そうして、無言のまま唇を塞いできました。
ドッと流し込まれた精気は相変わらずくどいですが、効果は覿面。
牙が突き刺さってできた四つの穴は、たちどころに塞がります。
その光景を目にしたクリスは、ヒヨコの隣で何やら口を尖らせておりました。
「やれやれ、あなたは本当によく怪我をしますね。危機感が乏しいのは、やはり痛覚がないせいでしょうか」
ギュスターヴにくっついてきていたノエルが小言を言いつつ、懐から出したハンカチで血の汚れを拭おうとします。
もったいないいい! とジゼルが泣き叫んで抵抗しておりますが……なるほど、これがギュスターヴが以前言っていた〝もったいないおばけ〟とかいうヤツですね。おぞましいです。
そんな元天使と吸血鬼の攻防を横目に、私を抱いたままのギュスターヴが吐いたのが、冒頭のセリフでした。