どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「クリス……!」
黒尽くめの小さな体は、刺股のようなもので押さえ込まれて、緑の中に埋まっていました。
その周囲を、六匹の屈強そうな魔物が取り囲んでおります。
体は鱗に覆われ、頭からは二本の角。
長い尻尾と──クリスの背にあるのと同じ、コウモリに似た翼を持つ魔物です。
「ドラゴン族……」
路地を抜けてすぐの場所には、白い猫のぬいぐるみが落ちていました。
どうやらドラゴン族達は、これでクリスを路地の奥まで誘い込んだようです。
「やだっ……はなせっ! はなせよっ!」
クリスは押さえ込まれているだけで、今のところは無傷なようです。
逆に、ドラゴン族が一匹、右目から流血していました。
クリスに、お団子の串で刺された模様です。
さっきの悲鳴はクリスではなく、このドラゴン族のものだったのでしょう。
リーダーらしき一際立派な体躯のドラゴン族が、足下でもがいているクリスを憎らしそうに見下ろして口を開きます。
「直接触れさえしなければ、害意を読み取られることもない」
なるほど、その手がありましたか。
ドラゴン族は脳みそまで筋肉タイプかと思っていましたのに、意外です。
などと、失礼なことを考えていたのがバレたのかどうなのか。
リーダーらしきドラゴン族が、私とヒヨコを鋭い目で睨みました。
「用があるのはこのガキだけだ。あんたらに手を出して魔王様を敵に回す気はない。こいつを置いて、とっとと失せな」
十日前に魔王城でクリスを追いかけ回していたドラゴン族達よりは冷静なようです。
とはいえ、彼らの言葉に従うわけには参りません。