どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「うちのものが、悪かった」
それはもう、ひどく悔しそうな顔をして頭を下げたのです。
私は、感銘を受けました。
同胞のために己の矜持を投げ打つ彼女の姿は、さきほど魔王の怒りから子狼を守ろうとした人狼族達に通じるものがあったのです。
そのため私は、このドラゴン族の姫に対しても好感を抱きました。
「あのツノ、かっこいいねー」
クラーラを見るクリスの目には、慕わしさが満ちてします。
それを確かめた私は、ヒヨコの背後から顔を出して言いました。
「どうか頭を上げてください。クリスも、私もヒヨコも何も損なわれておりませんので、気に病まないでくださいまし」
クラーラが静かに顔を上げ、窺うように私を見ます。
笑顔を作ってみせますと、彼女はようやく肩の力を抜きました。
それから、見事な赤い髪を掻き上げて言います。
「後腐れがないよう、迷惑料を支払いたい。ヘイヘイで送金させてちょうだい」
決済アプリで迷惑料を支払おうなんて、今時ですね。
しかし、自称保護者達がはりきってしまったせいで、残高がほぼ限度額なのです。
どうしたものかと思っていますと、焦れたクリスが袖を引いてきました。
「アヴィスー、タコ焼き食べたいよー」
「ええ、そうでしたね。タコ焼きを……」
ここで、私に名案が浮かびました。
ぱっと顔を輝かせて向き直りますと、クラーラがビクリと肩を震わせます。
戦々恐々とした表情の彼女に、私はこう提案しました。
「迷惑料をいただく代わりに、町を案内していただけませんか?」
「……は?」