どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「ア、アア、アヴィス様っ……なぐって! その大腿骨でいっぱい殴ってよぉお!」
「他人の性癖をとやかく言いたくはありませんが、あなたのそれは教育上よろしくないですね」
「はわわわわ! しゅきいい! そんな冷たい目で見られるとゾクゾクしちゃううう!」
「シンプルに気持ち悪い」
初対面で私にタコ殴りにされて気持ちよくなってしまったらしいクモンベルト。
そのあまりに残念な性癖を目の当たりにし、ヒヨコが即座に双剣を抜きましたが、彼も一応相互フォロワーです。
クモンベルトが営むタコ焼き屋さんは、大通り沿いではなく少し奥まった場所にありました。
私もヒヨコも、そしてクリスも、今までほとんど町歩きをしたことがないため、無事辿り着けるか心配だったのですが……
「あんたの交友関係どうなってんの……」
クラーラのおかげで迷わずに済みました。
彼女にとって、城下町は庭のようなものだそうです。
私と同じ年頃に見えますが、実はすでに五十年以上生きているとのこと。
思っていたより、お姉さんでしたね。
性的倒錯丸出しのクモンベルトにドン引きしつつ、クラーラが携帯端末で決済をします。
クリスのタコ焼きは、彼女が買ってくれることになったのです。
ヘイヘイ、と覇気のないおじさんの声が響きました。
ヘイヘイは魔界でトップシェアを誇る決済アプリなため、町のあちこちからくたびれたケンタウロスの声が聞こえてきます。
「景気が悪くなりそうですね。もっと爽やかな声に変更すべきです」
そんな一消費者の声を、何気なく会員制交流場で呟きますと、めちゃくちゃイイネをいただいた上、凄まじいスピードで拡散され始めました。
どうやら、私と同じように決済音に不満を抱いていた者が大勢いたようです。
そのうち誰かが、カスタマーセンターのアドレスを私の投稿にぶら下げたことで、フォロワーさん達がこぞって苦情を入れると表明し始めました。
「ネットって、恐ろしいですね……」
そっと携帯端末を仕舞う私に、クラーラは嫌悪感丸出しの目でクモンベルトを睨みつつ言いました。
「こんな性的倒錯者とあんたが付き合うのを、魔王様は本当にお許しになっているの?」
「いろいろ言ってはきますけど、全部無視しています。私が誰と付き合おうと、ギュスターヴに口出しなんてさせません」
ギュスターヴは父親ぶって、私の言動にしょっちゅう苦言をこぼします。
私がグリュン王妃となることを見据えていた義姉は厳しかったものですから、ギュスターヴのお説教など屁でもありませんが。
ただ、よくよく思い返してみますと、彼に叱られたのは魔女に精気のおかわりをもらおうとした時、ただ一度きりでした。
そう言うと、あの場に居合わせていたクラーラが呆れた顔をします。
「あれを、叱ったとは言わないのよ……なんだか、あんた達といると調子狂う」
彼女はそう言うと、私とヒヨコと、それからタコ焼を頬張っているクリスを眺めて小さくため息をつきました。
「他人の性癖をとやかく言いたくはありませんが、あなたのそれは教育上よろしくないですね」
「はわわわわ! しゅきいい! そんな冷たい目で見られるとゾクゾクしちゃううう!」
「シンプルに気持ち悪い」
初対面で私にタコ殴りにされて気持ちよくなってしまったらしいクモンベルト。
そのあまりに残念な性癖を目の当たりにし、ヒヨコが即座に双剣を抜きましたが、彼も一応相互フォロワーです。
クモンベルトが営むタコ焼き屋さんは、大通り沿いではなく少し奥まった場所にありました。
私もヒヨコも、そしてクリスも、今までほとんど町歩きをしたことがないため、無事辿り着けるか心配だったのですが……
「あんたの交友関係どうなってんの……」
クラーラのおかげで迷わずに済みました。
彼女にとって、城下町は庭のようなものだそうです。
私と同じ年頃に見えますが、実はすでに五十年以上生きているとのこと。
思っていたより、お姉さんでしたね。
性的倒錯丸出しのクモンベルトにドン引きしつつ、クラーラが携帯端末で決済をします。
クリスのタコ焼きは、彼女が買ってくれることになったのです。
ヘイヘイ、と覇気のないおじさんの声が響きました。
ヘイヘイは魔界でトップシェアを誇る決済アプリなため、町のあちこちからくたびれたケンタウロスの声が聞こえてきます。
「景気が悪くなりそうですね。もっと爽やかな声に変更すべきです」
そんな一消費者の声を、何気なく会員制交流場で呟きますと、めちゃくちゃイイネをいただいた上、凄まじいスピードで拡散され始めました。
どうやら、私と同じように決済音に不満を抱いていた者が大勢いたようです。
そのうち誰かが、カスタマーセンターのアドレスを私の投稿にぶら下げたことで、フォロワーさん達がこぞって苦情を入れると表明し始めました。
「ネットって、恐ろしいですね……」
そっと携帯端末を仕舞う私に、クラーラは嫌悪感丸出しの目でクモンベルトを睨みつつ言いました。
「こんな性的倒錯者とあんたが付き合うのを、魔王様は本当にお許しになっているの?」
「いろいろ言ってはきますけど、全部無視しています。私が誰と付き合おうと、ギュスターヴに口出しなんてさせません」
ギュスターヴは父親ぶって、私の言動にしょっちゅう苦言をこぼします。
私がグリュン王妃となることを見据えていた義姉は厳しかったものですから、ギュスターヴのお説教など屁でもありませんが。
ただ、よくよく思い返してみますと、彼に叱られたのは魔女に精気のおかわりをもらおうとした時、ただ一度きりでした。
そう言うと、あの場に居合わせていたクラーラが呆れた顔をします。
「あれを、叱ったとは言わないのよ……なんだか、あんた達といると調子狂う」
彼女はそう言うと、私とヒヨコと、それからタコ焼を頬張っているクリスを眺めて小さくため息をつきました。