どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
それにしましても、お団子屋さんのクモンスキーといい、やはり足が八本もあると便利ですね。
生地をかき回す、焼き方に流し入れる、串でひっくり返しまくる、ソースを塗る、箱詰めする、会計をする、が一度にできてしまうんですもの。
私がクモンベルトの仕事ぶりに見惚れていますと、あっ! と隣でクラーラが大きな声を上げました。
「ああ、もうっ……! フラフラするんじゃないわよ!」
どうやらまた、クリスが一人で歩いて行ってしまったようです。
いつの間にかタコ焼きを完食し、今度は三軒隣のチーズドッグ屋に吸い寄せられていました。
あの小さな体のどこに、あんなに食べ物が入るのだろう、とこの体になってから空腹を覚えたことのない私は不思議に思います。
ともあれ、クリスにかけられた呪いを知っているクラーラが、人混みに突っ込んでいこうとする彼を慌てて追いかけ──その手を掴みました。
「ねーね」
「やめて。あんたの姉になったつもりなんてないわ」
「でも、おれ、ねーねの弟になったつもりだもん」
「勝手なことを……」
クラーラは慕わしげに見上げてくるクリスに眉を顰めます。
けれども彼女は木っ端微塵になることも、クリスの手を離すこともありませんでした。
そんな腹違いの姉弟の姿を目にした私は、思わずその場に立ち尽くします。
「お義姉様……」
義姉は厳しかったですが、理不尽に私を叱ることは一度もありませんでした。
義姉のすることは、いつだって正しかったのです。
彼女に躾られたおかげで、私は絶命するあの瞬間まで、王子の婚約者という立場に恥じない振る舞いができていたのだと思っています。
私は性懲りも無く、今もまだ義姉が慕わしく、愛おしいのです。
彼女が本当は自分を疎ましく思っていたと知った後も、この気持ちは少しも変わりませんでした。
ですから、あの愛おしい人と二度と手を繋げない……繋いでもらえないのだと思うと寂しく、クリスが羨ましくなりました。
「お義姉様……」
そんな私の手を、すかさずヒヨコが握ってくれます。
義姉との再会は、ヒヨコが修業に出ている間の出来事ですが、彼には包み隠さず打ち明けておりました。
口をきけない彼は、ただただ相槌を打ちながら私の話を聞いてくれたのです。
「ヒヨコ、ありがとうございます」
私はヒヨコの手を握り返します。
血が通っていない彼の手は冷たいですが、私の心はちゃんと温かくなりました。
私は彼を引っ張って、チーズドッグ屋さんの前にいたクリスとクラーラに追い付きます。
そうして、ヒヨコと繋いでいない方の手で、会計を終えた後者の手を掴みました。
「えっ……ちょ、ちょっと? あんたまで何……」
「私も手を繋いでほしいです」
私が率直にそう述べますと、クラーラは両目をまんまるにしました。
それでも、彼女は私の手を振り払うことはありませんでした。
生地をかき回す、焼き方に流し入れる、串でひっくり返しまくる、ソースを塗る、箱詰めする、会計をする、が一度にできてしまうんですもの。
私がクモンベルトの仕事ぶりに見惚れていますと、あっ! と隣でクラーラが大きな声を上げました。
「ああ、もうっ……! フラフラするんじゃないわよ!」
どうやらまた、クリスが一人で歩いて行ってしまったようです。
いつの間にかタコ焼きを完食し、今度は三軒隣のチーズドッグ屋に吸い寄せられていました。
あの小さな体のどこに、あんなに食べ物が入るのだろう、とこの体になってから空腹を覚えたことのない私は不思議に思います。
ともあれ、クリスにかけられた呪いを知っているクラーラが、人混みに突っ込んでいこうとする彼を慌てて追いかけ──その手を掴みました。
「ねーね」
「やめて。あんたの姉になったつもりなんてないわ」
「でも、おれ、ねーねの弟になったつもりだもん」
「勝手なことを……」
クラーラは慕わしげに見上げてくるクリスに眉を顰めます。
けれども彼女は木っ端微塵になることも、クリスの手を離すこともありませんでした。
そんな腹違いの姉弟の姿を目にした私は、思わずその場に立ち尽くします。
「お義姉様……」
義姉は厳しかったですが、理不尽に私を叱ることは一度もありませんでした。
義姉のすることは、いつだって正しかったのです。
彼女に躾られたおかげで、私は絶命するあの瞬間まで、王子の婚約者という立場に恥じない振る舞いができていたのだと思っています。
私は性懲りも無く、今もまだ義姉が慕わしく、愛おしいのです。
彼女が本当は自分を疎ましく思っていたと知った後も、この気持ちは少しも変わりませんでした。
ですから、あの愛おしい人と二度と手を繋げない……繋いでもらえないのだと思うと寂しく、クリスが羨ましくなりました。
「お義姉様……」
そんな私の手を、すかさずヒヨコが握ってくれます。
義姉との再会は、ヒヨコが修業に出ている間の出来事ですが、彼には包み隠さず打ち明けておりました。
口をきけない彼は、ただただ相槌を打ちながら私の話を聞いてくれたのです。
「ヒヨコ、ありがとうございます」
私はヒヨコの手を握り返します。
血が通っていない彼の手は冷たいですが、私の心はちゃんと温かくなりました。
私は彼を引っ張って、チーズドッグ屋さんの前にいたクリスとクラーラに追い付きます。
そうして、ヒヨコと繋いでいない方の手で、会計を終えた後者の手を掴みました。
「えっ……ちょ、ちょっと? あんたまで何……」
「私も手を繋いでほしいです」
私が率直にそう述べますと、クラーラは両目をまんまるにしました。
それでも、彼女は私の手を振り払うことはありませんでした。