どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「あんたは、次から次へと無理難題を……! ヘイヘイの決済音を変更するのが先だから、すぐには無理だぞ!」
「できない、とは言わないんですね……」

 魔王とマッドサイエンティスト──この最悪の組み合わにより、不貞男強制去勢システムの導入が急速に現実味を帯びてきてしまった。
 思わず天を仰ぐ堕天使をよそに、後者がアヴィスに話題を戻す。

「あの子は、暗くなる前には魔王城に戻っているんだろうな?」
「門限が五時だからな。戻らねば、私が迎えに行く」

 魔王の仕事には消極的でも、アヴィスのお父さん業務はやる気満々である。
 アヴィスに血肉を分けたわけではないキロンは、それに肩を竦めつつ続けた。

「戻ったら、明日の朝まで外を出歩かせない方がいいぞ」
「おや、キロン。今夜、何かあるんですか?」

 故郷に向かって拝むのをやめたノエルの問いに、キロンがタブレットを操作しつつ答える。

「新月と銘打って、LED電球の一斉メンテナンスをすることになった。魔王はどうせ寝ている時間だから関係なかろうが……」
「寝ているな」
「爆睡中ですね」
「とにかく、魔界中が真っ暗闇になる。アヴィスが転びでもしたらかわいそうだから、出歩かせないようにしてくれよ」

 それは、生粋の〝いい人〟であるキロンの、百パーセント善意からの言葉だった。
 しかし、魔王と堕天使は心の中で声を揃える。

 フラグを立てやがったな、と。





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