どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜


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 魔王城の城下町の真ん中には、大きな噴水がありました。
 一通り町を散策し終えた私達は、その縁に腰を落ち着けて休憩をとります。
 並んで座った私とヒヨコを胡乱な目で眺め、クラーラが呟きました。

「あんた達って、どうしてそんなに飲食に興味がないわけ?」
「私もヒヨコも、一度死んだ身だからでしょうか。私達にはおかまいなく、お二人はどうぞ召し上がってください」

 そう答えた私と自身の間にいる相手──クリスに視線を移し、クラーラは今度は呆れた顔をします。

「こっちはこっちで、いったいどれだけ食えば気が済むのよ」

 クリスはたこ焼きに続いて、チーズドッグ、クレープ、ソフトクリーム、たい焼き……そして、今は焼き鳥串を両手に三本ずつ持って、むしゃむしゃしております。
 ヘイヘイヘイヘイ言わされたのは、やはりクラーラの携帯端末でした。
 そのヘイヘイアプリですが、焼き鳥串の決済を終えた直後に緊急メンテナンスに入り、現在は使用できなくなっております。
 何があったのでしょうね。
 私には皆目見当もつきません。
 クラーラも私も、もちろんヒヨコも現金を持ち歩いていないため、クリスの買い食いもここまでとなりました。

「ねーね、焼き鳥おいしーよ!」
「あっそ、よかったわね」

 何度突き放しても、ねーね、ねーね、と慕ってくるクリスに、クラーラも根負けしたようです。
 しかめ面をしつつも、タレで汚れた幼子の口元を拭ってやる姿は、面倒見のいい姉そのものでした。
 幼い頃、本当の弟のように可愛く思っていたジョーヌ王子を思い出し、私も懐かしくなってしまいます。
 池の主に食べられて亡くなったという彼の魂は、一体どこへ行ってしまったのでしょう。
 親殺しは天界に行けないはずなので、悪霊となって地界を彷徨っているのか……

「それとも、ジョーヌ殿下も魔界のどこかにいるのかしらね? ねえ、ヒヨコ。どう思います?」
「……」

 口のきけないヒヨコからは、答えが返るはずもありません。
 ただ、気のせいでしょうか。
 なんだか、苦笑されたように感じました。
 そうこうしているうちに、クリスが最後の焼き鳥串に食らいつき始めます。
 それを眺めつつ、私はずっと気になっていたことをクラーラに問いかけました。
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