どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
53話 ごめんなさいして
「──おやまあ、いらっしゃい」
魔女ウルスラの家は、町外れの森の奥にありました。
なかなかに立派な屋敷の周囲には、広大な薬草畑も作られています。
礼装をした執事らしき羊──ダジャレを言っているわけではありません──に呼ばれて玄関までやってきた魔女は、たいそう驚いた様子でした。
クリスが私と一緒に帰ってきたことにも、私達の手を引いてきたのがドラゴン族の姫クラーラであることにも──そして、クリスに触れたクラーラが無傷であることにも。
「子供というのは、私の予想など容易く凌駕してしまうね。これだから、子育ては楽しいんだ」
そう言って笑う千年を超えて生きる魔女は、慈愛に満ちた母親の顔をしていました。
そんな魔女を、クラーラは憎々しげに睨みます。
「もういいだろう。義理は果たした」
彼女は吐き捨てるように言いますと、私とクリスから手を離そうとしましたが……
「まだ、ご用事は済んでいませんよ」
「ママにあやまってもらうんでしょ」
私とクリスは示し合わせたみたいに、彼女と繋いだ手に力を込めて引き止めます。
「私は、そんなこと望んでは……!」
クラーラは私達を振り切ろうとしますが、ここで動いたのは最初に扉を開けてくれた羊執事でした。
彼は、私とクリスとクラーラ、それからヒヨコもひとまとめにして屋敷の中に押し込めると、扉を閉めてしまいます。
ウール百パーセントの下は、筋肉二百パーセントなのでしょうか。
「あのねぇ、ママ。アヴィスにお団子、ねーねにはたくさんおごってもらった」
「そうかい、ぼうや。よかったねぇ。アヴィスもクラーラ姫もありがとう。お礼をしないといけないね。ゆっくりしておいき」
「お礼は結構ですが、お邪魔はします」
「ちょ、ちょっと! 私はいいってば!」