どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「大人しくて引っ込み思案で泣き虫で、けれども優しくて純粋で虫一匹殺すこともできない、まさしく天使のような男の子ですもの」
「あの子を天使だなんて思っているのは、もう君だけだよ。私が今かろうじて生かされているのだって、親殺しが神に反く行為だからという理由だけだ。死んだ後に天界でアヴィスと再会したいから、とね」
「あいにく、私は魔界に行ってしまったんですけれど」
「だったら、私は心置きなく殺されることになるかな」
ポクポク頭を叩く私を咎めることもなく、国王陛下は自嘲の笑みを浮かべて続けました。
「経緯はどうであれ、エミールはグリュンの王となる。あの子しかもう、この国を継げる者はいないのだから……」
「エミールしか……?」
ここでふと、私は気付きます。
王宮を制圧したのが兄かどうかはともかくとして、国王陛下と第二王妃がこうして無惨な状態になっているのだとしたら、彼らの息子──第二王妃がそもそもエミールを差し置いて王位を継がせたがっていたジョーヌ王子も無事ではないかもしれません。
「ジョーヌ王子は? 国王陛下、ジョーヌ王子はどうなさっているんですか?」
ザクッ、と背後で雪を踏みしめる音がしました。
ヒヨコが後退った音のようです。
一方、国王陛下は雪に視線を落とし、震える声でこう告げました。
「あの子を天使だなんて思っているのは、もう君だけだよ。私が今かろうじて生かされているのだって、親殺しが神に反く行為だからという理由だけだ。死んだ後に天界でアヴィスと再会したいから、とね」
「あいにく、私は魔界に行ってしまったんですけれど」
「だったら、私は心置きなく殺されることになるかな」
ポクポク頭を叩く私を咎めることもなく、国王陛下は自嘲の笑みを浮かべて続けました。
「経緯はどうであれ、エミールはグリュンの王となる。あの子しかもう、この国を継げる者はいないのだから……」
「エミールしか……?」
ここでふと、私は気付きます。
王宮を制圧したのが兄かどうかはともかくとして、国王陛下と第二王妃がこうして無惨な状態になっているのだとしたら、彼らの息子──第二王妃がそもそもエミールを差し置いて王位を継がせたがっていたジョーヌ王子も無事ではないかもしれません。
「ジョーヌ王子は? 国王陛下、ジョーヌ王子はどうなさっているんですか?」
ザクッ、と背後で雪を踏みしめる音がしました。
ヒヨコが後退った音のようです。
一方、国王陛下は雪に視線を落とし、震える声でこう告げました。