どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜

13話 自称アヴィスのお父さん



「アヴィス以外は平伏せ」


 いきなり地界に現れた魔界の王は、尊大にそう告げました。
 そのとたんです。
 ヒヨコも兄も、エミールまでも、彼が命じた通りにその場に平伏したのです。
 それが、彼らの意思によるものではないのは明白でした。
 ヒヨコは左手で床を掻き毟って足掻き、兄は歯を食いしばって必死に身体を起こそうと試みます。
 そして、エミールはというと……

「ちっ」

 まるで呪い殺さんばかりの目でギュスターヴを睨み上げ、舌打ちをしたのでした。

「エミール……?」

 大人しくて引っ込み思案で泣き虫で──いえ、もう分かっているのです。
 私のこの認識が彼の全てではないのは、いい加減認めます。
 それでも、エミールが粗野な真似をするのが想定外すぎて、思わず二度見してしまいました。
 そんなことをしていたせいで、床に這いつくばりながらも手を伸ばしてきた彼にぐっと腕を掴まれます。加減も忘れた、ひどく強い力で。
 痛覚はなくても、骨が軋む感触は無力な女を慄かせるのには十分でした。
 私が再び、エミールに対する恐怖に支配されそうになった、その時です。

「子供の喧嘩に、大人は口を出すべきではないと思うのだが……」

 カツカツとブーツの踵を鳴らしてギュスターヴが歩いてきたかと思ったら、エミールの手を引き剥がしてくれました。
 そうして……
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