どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
14話 清廉潔白な真犯人
「──思い出しました」
魔界へと続く階段は、国王執務室を出てすぐのところにありました。
いえ、さっきまでは絶対にそこにはなかったので、きっとギュスターヴが何かしたのでしょう。
私とヒヨコが上ってきた時は真っ暗だった階段が、今は等間隔で灯りを並べて主君の足下を照らしています。
魔王はそれを、私を片腕に抱いたまま悠然と下っていきました。
そんな中でふいに声を上げた私の顔を、ギュスターヴの赤い瞳が覗き込みます。
「何を思い出したと?」
こんなに密着していても全く居心地悪く感じないのは、やはりこの身体が彼の血肉でできているせいでしょうか。
心も身体も、すでにこの魔王を細胞の親と認識してしまっているのかもしれません。
それは本能であり、抗うのも馬鹿馬鹿しく思うほど、ギュスターヴは私の心理的縄張りにするりと入り込んできます。
私も負けじと彼の瞳を見つめて口を開きました。
「給仕の……毒入りのワインをエミールに渡した給仕の顔です。どうしてすぐに気づかなかったんでしょう。あれは──」
給仕の格好をした男がワイングラスを差し出し、エミールを介してそれに口を付けたことで、私は死にました。
国王陛下はそんな給仕は存在しないと言いましたが、私は確かに見たのです。
あの給仕の顔は──
「私の魂を迎えにきた、天使です」
「……ほう」