どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
21話 泣いちゃった
「私の子に文句があるというのならば、私が代わって聞こうではないか」
「ま、魔王様……」
ギュスターヴの長い足の間から見えたジゼルの顔は、恐怖で引き攣っていました。
ただでさえ青白い肌が、死人のヒヨコのそれのように青さを増しています。
ついにはガタガタ震え出した彼女の手を、ヒヨコがすかさず振り解きました。
「……っ、このっ……死人のくせにっ!!」
慌てて捕まえようとするジゼルの手を躱し、ヒヨコは床に足が付く前に大きく剣を振り抜きます。
悲鳴を上げる間もなく、吸血鬼の首が宙を舞いました。
長い黒髪と吹き出た血が同じ弧を描きます。
にもかかわらず、その澱んだ両眼はギョロリと動いてヒヨコを睨みつけ、首無しの身体も再び彼を捕らえようと動くのです。
きっと、刎ねた首だってすぐにくっついてしまうのでしょう。
「どうすれば……どうすれば、いいの……」
不死身の相手を、一体どうやって倒せばいいのでしょうか。
私が床に倒れ込んだまま、絶望に打ち拉がれそうになった時です。
ふいに目の前の額縁が……いえ、私が覗き込んでいた股座の主が口を開きました。
「そこのヒヨコ──貴様に、吸血鬼の滅し方を教えておこう」
「……っ、魔王っ!!」
とたん、ジゼルの生首が凄まじい形相で叫びました。
なんでもいいですが、いい加減こわいです。
夢に見そう……眠れればの話ですけれど。