どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「そんなに泣いてどうした。膝か? 膝が痛いのか? しかし、わんぱく少年のような膝だな?」
「うっ……ぐす、痛くないです……」
「では、怖かったのだな? よしよし、もう大丈夫だ。悪い吸血鬼はお父さんがやっつけてやったぞ」
「お父さんじゃないですし……別に、怖くて涙が出てるんじゃないです……」

 じゃあなんだ、とギュスターヴが途方に暮れたような顔をしています。
 ヒヨコもおそるおそるといった態で寄ってきました。
 私はうるうるの瞳で、そんな彼らを交互に見上げて訴えます。

「さっきの、あの吸血鬼……ジゼルって方……」
「うむ、あいつが?」
「あの方、めっっっ……」
「め?」

 ぎゅっ、と一度きつく目を瞑り、ためられるだけためてから……



「……っっっちゃくちゃ! 精気がまずかったんですっ!!」



 全身全霊を込めて気持ちを吐き出しました。

「もう、辛くて苦くて酸っぱくて、そのくせ死ぬほど甘ったるい……最低最悪! まるで、この世の終わりみたいな味……っ!!」
「それほどか……逆に試してみたくなるな」
「いけません! 好奇心は猫ちゃんをも殺すのですよ!?」
「うむ、お前が言うと実に説得力がある」

 今は鼻の奥がツーンとしていて、涙が勝手にポロポロ溢れてしまいます。
 それを、さきほど吸血鬼達を容赦なく焼き尽くしたのと同じ手が優しく拭ってくれました。
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