どいつもこいつも愚か者。私が一番愚か者! 〜第二の人生は魔王のスネをかじって面白おかしく生きることにしました〜
「クモ美は罪作りな方でしたのね。このクモ之介も、クモ太郎もクモ吉もクモ右衛門もクモノビッチも、クモンスキーもクモンベルトも、みなさんご自分が彼女の唯一の恋人だと思っていらっしゃいました」
「待て、アヴィス。クモノビッチまでは把握しているが、クモンスキーとクモンベルトは初耳なんだが?」
「クモンスキーは三日前。話し合う余地がございましたので、クモ美に他に何人も恋人がいたことをお伝えしましたところ、あっさりと解放してくださいました。今は、クモ江という新しい恋人と楽しくやっていらっしゃいます。ちなみに、相互フォロワーです」
「……そうか。クモンベルトは?」

 いまだ、私にブロックされたままのギュスターヴは、ちょっぴり切ない顔をします。
 なお、ギュスターヴの寝顔と、彼とヒヨコと三人でタピオカを食べている写真を投稿したのをきっかけに、私は一気にフォロワーが増えて見事インフルエンサーの仲間入りを果たしました。

「クモンベルトにお会いしたのは昨日のことです。むしゃくしゃしていたので、声をかけられた瞬間振り向きざまに殴りつけてやりましたら、泣いて謝ってきたのでもう一度殴りました」
「クモンベルトはまだ声をかけただけではないか。泣いて謝ってきたのなら少しくらい話を聞いてやったらどうだ」
「いやです。だって、むしゃくしゃしていたんですもの」
「そうか……」

 なお、素手ではなく得物で殴りました。
 半月前に骸骨門番のプルートーから奪った彼の大腿骨のことです。
 門番の大腿骨──略してモンコツ。
 プルートーは返せと言っているそうですが、知ったことではありません。

「勇ましいのは結構だが、極力怪我はするな」

 ギュスターヴはため息交じりにそう言って、今はもう傷の癒えた私の左腕を撫でました。
 この魔王は多少説教くさいところはありますが、兄と違ってしつこくないので相手をするのも楽ちんです。
 私はそんな彼の首に腕を回して言いました。
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