この度先輩のご飯係になりました~私と先輩の幸せレシピ~
「…?美桜?」
「…かない…で」
「え?」
「いおり先輩…行かないで…ください…」
いおり先輩は驚いたように私の顔を見て、すぐこちらに戻ってきてくれた。
「なにかゼリーでも持ってこようかと思ったんだけど、またあとにするね」
いおり先輩は私の枕元に腰をおろした。
優しく手を握ってくれるいおり先輩に、私はお母さんを思い出す。
「よく…」
「うん?」
「小さい頃、私、よく熱を出すことがあったんです…」
私の小さなつぶやきを聞き逃すまいと、いおり先輩はこちらに耳をかたむけてくれる。
「うん、そう言っていたね。俺にはじめてご飯を作ってくれたときに」
いおり先輩、憶えていてくれたんだ…。
「私、身体が弱くて、いつも熱ばかり出していて…お母さんに心配ばかりかけちゃった…」
お母さんは私が熱を出すたびに、いつもかきたまうどんを作ってくれた。
それがすごく優しくておいしくて、早くよくなる気がした。
「小さい頃はご飯が好きじゃなかったんです…」
いおり先輩は目を丸くしたけれど、なにも言わずに聞いてくれている。
「幼稚園の給食も、小学校の給食も苦手だった…」
当時は好き嫌いが多かった。嫌いな野菜も料理もたくさんあった。
その中でも、ご飯の時間を嫌いになった決定的な事件があった。