この度先輩のご飯係になりました~私と先輩の幸せレシピ~

「僕、あいつに言ったんです。野菜も食べなきゃだめだよって。でもあいつは、うるさいって僕の給食のお肉勝手に食べて、それからけんかになってしまって…」


 祐一くんの頭に犬の垂れた耳が見えるようだった。


「僕はあいつにずっと元気でいてもらいたくて言っただけなんです。それなのに、あれから口も聞いてくれなくなってしまって…」


 今にも泣き出しそうな祐一くんの目の前に、クリームを添えたパウンドケーキを置いた。


「よかったら食べて」


「あ、ありがとうございます…」


 しょんぼりとしていた祐一くんは、パウンドケーキを口に入れると表情をかがやかせた。


「おいしいです!」


「よかった!」


 ふむ、野菜嫌いな子に野菜を食べてもらいたいってことだよね。


 目の前で嬉しそうにパウンドケーキをつつく祐一くんに、私の心は温かくなった。


 幼なじみの子の健康を心配しているんだよね。


 でもうまく伝わらなくて、けんかになってしまった。


 祐一くんの気持ちは、痛いほどに分かる。


 私も、一葉くんとけんか中だから。


 私は祐一くんに優しく声をかけた。

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