この度先輩のご飯係になりました~私と先輩の幸せレシピ~
「祐一くん、話はわかったよ。幼なじみの子に野菜を食べてもらいたいのと、仲直りしたい、ってことだよね?」
「…はい」
「また明日家庭科室に来てくれるかな?それまでに考えておくから」
「わかりました」
パウンドケーキをきれいに平らげた祐一くんは、ぺこりと礼儀正しく家庭科室を出て行った。
静かにパウンドケーキを頬張っていたいおり先輩が、ゆっくりと口を開く。
「美桜、お人好しすぎない?」
「え?」
「だれとも知らない人の相談受けて、それで解決してあげようなんてさ。労力のむだだと思うけど。なんの恩返しもあるわけじゃないだろうし」
たしかにそうだ。
ここに相談にくる人は知らない生徒ばかりで、普段関わったことのない人たち。
でも、だからこそ。
「恩返しなんてなくていいんです。私はただ、いろんな人の話を聞いて、その人の悩みが少しでも楽になるなら、それがうれしいことなんです。食の悩みであるならなおさら!」
私の返答に、いおり先輩は眉を下げて浅くため息をついた。
「まぁ、そんな美桜だから、俺は好きになったんだけどね」