この度先輩のご飯係になりました~私と先輩の幸せレシピ~

 じゃなくて!


「なにするんですか!」


 急に噛みついてきた先輩に、私は抗議の意味をこめてきりっとにらむ。


 しかし先輩はひょうひょうとした様子で、平然と答える。


「なにって…。きみ、いい匂いがしたから、食べたら美味しそうだなぁって思って」


「に、匂い…?」


「美味しそうな血の匂い」


「先輩、吸血鬼かなにかですか!?」


 つかみどころのない不思議な先輩すぎる…。本当に先輩なんだよね…?


「先輩先輩って呼ぶけど、きみはだれ?」


「あ、申し遅れました!私、綾瀬 美桜って言います!二年生です。緑色のネクタイなので、三年生ですよね?」


 「ああ…」と先輩は肯定のような、納得のような返事をもらす。


「先輩、うちの前で倒れていたんです。なので急きょうちに運んで様子を見てたんですけど…」


 心配で連れてきたはいいものの、急に噛みついてきたりして、変な人を連れてきてしまったかもしれない…。


 私が少し後悔していると、先輩は穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「美桜、ありがとう。少しゆっくりして、楽になったような気がするよ」


「そ、そうですか…?」


 先輩の顔色は相変わらず真っ青なままで、目の下も真っ黒。とても元気になったとは思えない。


 もしかして、本当に吸血鬼……?

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