強面社長は幼馴染のつよつよ教師を一途に溺愛する
 チクッと胸が痛んだ。急激に食欲が落ちた気がする。少しアルコールが回りだしたのだろうか。まだ飲み比べセットと、ジョッキを3杯飲んだだけなのに。
 私はそれまでの楽しさを忘れ、なぜだか猛烈に腹が立ってきた。
「……どうせ、私は可愛くないわよ」
「は? なんか言ったか?」
「べつに……」
 突然黙り込んだ私に、不思議そうな目を向ける謙吾。
 まさか7年も前に、たった一度寝ただけの女が、謙吾の過去の女に嫉妬しているなんて思いもしていないのだろう。
 私は言いようのない思いをジョッキを空けることでやり過ごした。
「い、糸?」
「なに」
「その……婚活アプリはその後どうだ?」
 なぜその話題に? 好奇心?
「イイネが508個」
「508⁉ そんなの増えたのか?」
 そうよ。あれからさらに増えたの。私だってやるときゃやるんだから!
「私、結構モテるみたいよ?」
「そ、それで? マッチングは……」
「どうしようかなーと思ってる。運動会準備で忙しくて、課金には至ってないけど」
 忙しいのは本当。でも、課金する気は今のところない。
 こんな風に気を引くつもりもなかったのだけど、ついつい言ってしまった。
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