強面社長は幼馴染のつよつよ教師を一途に溺愛する
「ねえ、どうしてそんなこと気にしてるの?」
「え? それは……写真撮ったの俺だし……」
「あの写真、よく撮れてるって」
「ああ、それは――」
 コツがあるからな。本来は自然光で撮るべきだが、室内の明かりでも照明の当たり方次第で、加工アプリを使わなくても十分きれいに撮れる方法はある。そのマニュアルを利用者向けに作っているのが俺なのだから。
 それに、俺が一番可愛いと思って撮った糸の写真なんだから当然だろう。糸の良さは誰よりもわかっているつもりだ。
「謙吾のおかげかもね。508イイネ」
「いや、それだけじゃないだろう。糸のプロフィールが」
「私にイイネがたくさんついたら嬉しい?」
「……」
「私がマッチングに成功したら嬉しい? ねえ、謙吾答えてよ」
「そんなわけ……糸、酔ってる?」
「酔ってない! 話をそらさないでよ!」
 糸が猛烈に怒りだした。再会してから、俺たちの核心に触れるようなことを言ったのはこれが初めてだった。
 この話は慎重に話を進めなければならない。そう思ったから確認しただけなのだが、俺は間違えたらしい。
「私が誰かと結婚していいって言うの? ねえ、答えなさいよ!」
「そ、そんなことは言ってない」
 これは……真面目に答えないといけないやつだ。
 たとえ糸が酔っていたとしても、俺は俺の真剣な気持ちを伝えなければ――。
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