強面社長は幼馴染のつよつよ教師を一途に溺愛する
 午前中は男性保護者・同窓生男子による綱引きで盛り上がり、大型戦力の六車家男子は大活躍していた。
 かくいう私も同窓生女子として玉入れに参加。同じチームになった六車のお義母さんの活躍で大勝利を収めた。
 
 昼休憩時は学園が用意してくれた巻寿司を五分ほどで食べ終え、グランドの見回りだ。
「先生! 一緒に写真撮ってください!」
 と声がかかることしばしば。毎年のことだが各地でファンサに応じる。
 六車家の席までやって来た。
「糸先生お疲れ様〜。ちゃんと食べたの?」
「巻寿司を食べましたよ。お義母さんさっきは大活躍でしたね」
 玉入れはやっぱり、身長よねー。それにしても60を過ぎていると思えないバワフルさだわ。私も見習わなくちゃ。
「運動会はいつになっても楽しいわね! でももう私も歳だから。来年はどうなるかわからないわねぇ」
 いやいや、あと10年は参加し続けると思うけど。
「母さん、俺と糸の子供が大きくなるまで頑張ってくれ」
「謙吾……あんたの口からそんな言葉が出てくるなんて……」
 お義母さんが感動している。私も驚いたわよ、まさかそんなことを言い出すなんて。
 でも子供かー。きっと大きい子になるんだろうな……。
 ふと小さい頃の謙吾を思い出す。大きくて目付きが悪くても、優しい子だった。私もいつか謙吾に似た子が欲しい……。
 ほんの一瞬まだ見ぬ未来に思いを馳せた。

 しかしまだ数人の先生しか婚約のことは知らないのだ。ここにいると皆の注目を集めてしまう。
 私は限られた休憩時間の中、多くの家族と触れ合うため、グラウンドの見回りに戻った。
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