私の彼氏は配信者!
気を抜いた姿を相手に晒すのだから、それが相手に受け入れてもらえないならアウトだもんねぇ…。
うまく隠したとしても、長くは続かんでしょうよ。
そういった意味でも1人の時間がなかなか取れなかったり、色々合わなかった際の撤去もまた手間だ。


「……そう考えると、同棲も一長一短か…。婚期を逃すともいわれているけど……相手にもよる、と」


『成程。同棲も一長一短あるモノねぇ。相性を見るには手っ取り早くはあるのは分かる』

『だろう? デメリットを見ると、なかなか踏ん切りがつかなかったんだ。時間以外は、とくにはなかったと思うぞ』

『了解…。難しいねぇ』

『まぁ。お互いの意見すり合わせがきちんと出来る人同士なら、時間はかかってもいい関係は築けると思う。もし、気になる人がいるなら』


え?


『俺に気を使わないで、良い人がいれば先に進めよ?』


固まってると、もう一つ。


『悠は、きちんと話せる人だろ。大丈夫』


ピコン。
と通知音が鳴って、仁からのメッセージを受け取った。
え? 何で? なんでバレたし!
……あー…におわせ…てたな、私。最初の出だしがモロでしたわ…。
と言うか。察し良すぎではありませんか?
何故にこの察しの良さを、あの期間中に発揮しなかったんでしょうかね?


『正直複雑なんだけどさ。結局俺は悠に対して、意見のすり合わせをあまりしなかったんだ。現状に満足していたし、甘えていたんだ。それが俺の今の状況だと思ってる』

『そこは…私も同じだねぇ。一緒にいるための意見のすり合わせはそこまで必要じゃなかったから、その辺はあまり話さなかったんだと思う。でも、必要だったねぇ…』

『そうだな。でも、俺は別れを切り出されるその瞬間まで。悠に不満を抱いた事はあまりないよ。あの3ヵ月は、俺が悪い甘え方をしていただけで、悠が悪いなんて事はなかったんだ。だから、自信を無くさなくても良い』

『そうなの? てっきり、私に問題があったのかと…』


そう言われて、戸惑う。
あの3ヵ月間、自問自答を繰り返して。
自分に非があるから、連絡をくれないのだと思っていた。


『悠には本当に悪い事をしたと思っている。あんなに連絡くれてたのにな…。責める事も禄にせずに切り捨てられた事はショックだったけれど、そうじゃないんだってわかってる』

『…ん』

『俺を責め立てる期間は、とうに過ぎていたんだ。それじゃしょうがないって、今は思ってる。全面的に俺が悪いんだから、悠は気にする事はないよ。気にするのなら、次に活かせば良い』



「……次に…活かす」



『…これまで、寂しかったよな…ごめん』



「……あ」


そうか。
私、寂しくもあったのか。
不安もあったし、焦燥感もあったけれども。
私は…あの時、仁に会えなくて。構ってもらえなくて寂しかったんだな…。
それで、悔しくて、悲しくて……。


「うーわぁ……」


今更ながらに、はっきりと当時の心境を自覚いたしましたわ。
思った以上に、私自身寂しがり屋だと思い知りました。
当時無自覚で思い悩んでいたから、そりゃ胃に穴あきかけますわ。



『…今』

『ん?』

『今更ながらに、当時の心境をはっきりと自覚したわ…。私、寂しかったんだな』

『めっちゃ他人事に言うね。と、言うか。自覚なかったのか? 結構寂しがり屋だったぞ、悠は』


………ゑ?



『3年目となると、もう大丈夫のかなって思うくらいにはわからなくはなったけどさ。1年目2年目は時間が合えば会ってただろ。短時間だったとしても』

『え? え?』

『マジで自覚なし? デートの時とか、家に行ってる時とか。割と悠の方からくっついてたよ。一緒にいて、嬉しそうにしてたし。帰る時寂しそうにしてたから、相当好かれているなって思ってたんだ』


マジですか。
付き合い当時から、私無意識にやってたって事?
あ、でも。凄くしっくりくる感情もあるから、間違いではなさそう…。
………うわぁ……。


『まって。マジで、待って。今、物凄く恥ずかしい!』

『言い訳にもなるけれどさ。その、相当好かれてるって認識があったから、自惚れていたのかもしれないなぁって。今思えば、だけど』


そう言われて、腑に落ちた。
だから、仁が言っている事は事実なんだろうな。
うっわ。ホントに恥ずかしいんだが。
キャラじゃないでしょうに! 無自覚だったのが余計に質が悪いんですが!


『うー…。無自覚とはいえ、増長させたきっかけになってたんなら、私の方こそゴメンだよ…』

『気にすんなって。悠が少し寂しがり屋だったのに、それを忘れて自惚れていたんだから。でも、自覚したなら、今後の付き合いはきちんとわかりやすく言うんだぞ』

『そうする。話聞いてくれてありがとう。ちょっと、もう少し自分見つめ直すね』

『おう。いつでも頼れよー。友達として、話を聞いちゃるぞ』


そう締めくくられて、やり取りは終了された。
終わった後は勿論。ベッドで転げまわりましたとも、羞恥心で。
この年になって、新たな自分にこんにちわする事になろうとは……。

でも。
ちょっと救われた事もあったな。
今回連絡が取れなくなった原因は、自分にあるモノだと思っていたのよ。全部ではないけれども…ね。
少し、胸の内の靄が晴れた感じだわ。


ちょっと気持ちにすっきりしたところで、改めて麻倉くんの事を考えようか。
麻倉くんとは、仁科がコラボする時に知り合ったのよね。コラボ用のイラストを描く、とかで。
そこからちょいちょい、イラスト作成依頼を受けるうちに仲良くなったっけ。
麻倉くんの声も話し方も、凄く心地が良いんだよねぇ…。
正直、かなり好みなのですよ。


ふいに。
アル教授の動画が見たくなって、動画アプリを立ち上げる。内容もそうなのだけれど、声が聞きたくなったのよ。
でも、返事を待ってもらっている手前。電話をするのもはばかられるのよね…。
なので。
初めて彼からお仕事を頂いた時期のモノから見始めた。
結構あって、すべてを見る事は出来なかったけれど。

動画を見ていく中で。
教授を通して、麻倉くんが話している姿が浮かんだ。
数日前に感じていた、彼の声や、手のぬくもりとか…。
思い出すと、胸が切なくなる。
うん。やっぱり、私は麻倉くんが好きなんだ。



覚悟を決めます。
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