私の彼氏は配信者!
こんなあっさりOKを出されるとは思いませんが?


「……パーム(あの人)、ちょくちょく問題行動があって、うちの事務所内でも要注意人物だったんだよ。だから、僕達が嫌だと言ったらこうなるように話し合いがされていたんだよ」

「そうなんだ。問題行動って……彼女が嫌っている人に対しての嫌がらせ?」

「そうだね。あとはあからさまな異性へのアピールかな。流石に配信中には露骨な事はしないけれど、配信が終われば…ってヤツ」

「うわぁ……」


パームさん、何してるんでしょうか。
結構、彼女に対する認識が変わったわ。男漁りしている●女のイメージがつきましたわ。


「アルルカン・ダルクとしては、もう一緒に仕事する事はないかな。他の人は知らないけれど。僕には悠がいるのに、あんな人になびくわけないじゃないか」

「遥翔?」

「仁科で味を占めたか知らないけどね、まとわりつかれるのはうんざりするよ。キャラも外見も、好みではないから、迷惑でしかない」


精一杯、言葉を選んだような言い回しに苦笑する。
それでも、結構棘がある言い方になっているから。遥翔のストレスはお察しかもしれない。


「遥翔。私の前では気を使わなくて良いよ。汚い言葉を使いたくないだけなら、そのままで良いけれど」

「ありがとう。極力使いたくはないんだけどね、どうしてもの時は言っちゃうかも」


あらま。
基本的に温厚な遥翔がこんな事を言うとは。
だいぶ辟易しているのでは? 近いうち爆発するんじゃなかろうか。
適度に鬱憤晴らししないと、精神衛生上よろしくないかもしれない。


「遥翔。無理しちゃダメだよ。話して楽になる事があれば、いくらでも聞くから。不満はどんどん吐き出してね」

「ありがとう。悠は優しいね……はぁ。癒される」


早速遥翔は私に近づいて、すっぽりと抱き込んでしまった。
肩に頭をのせてぐりぐりしてくる様は、ホントに大きなわんこのようで可愛い。
何とか手を伸ばして彼の頭を撫でる。


「とりあえず…僕の方で何とかしてみるから。レヴィとしてはまだ動かないでほしい」

「私は様子見?」

「そう。悠が危ない目に合うのは嫌なんだ。また体を壊したりしたら……僕が何するかわからなくなるから」

「おぉう。ソレはぜひとも避けなきゃね。わかった。私は遥翔からの指示がない限り、この件に関してはノータッチでいるわ」


彼のお願いで、私からのアクションはナシの方向で時期を待つ事に。
遥翔の為にも、ここはおとなしくした方が良さそうね。彼に問題行動を起こさせるわけにはいかないもの。


「些細な事でも、何かあったらすぐ教えてね。悠はため込む癖があるから、心配だよ」

「前科があるからなぁ…。大丈夫とは言い切れないけれど、気を付けるよ。ただ、私自身何も思わない事もあるから、遥翔も私のアカウント見てて?」

「了解」


ここで話が終わろうとして、ふとした考えがよぎる。



「ただし、やりすぎないでね? 私も遥翔にとって良くない事が起こる事が、とても嫌なの」

「……善処する」

「それはセーブしないと言っているようなものよ。遥翔が原因で、私を悲しませたいの?」

「それは本意ではない…かな。じゃあ、頑張る」

「お願いね?」


こうして夜は更けていったけれども。
何事も起こらなければ良いなと言う願いは虚しく、招かざる客は無遠慮にやってきたのでした。
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