人生終了のお知らせが届きました

地獄で仏なんて、都合良い話しなんてある訳が無い。
紗理奈はガックリと肩を落とした。
紗理奈にとって孝弘は、児童養護施設で優しく手を差し伸べてくれた頼れる兄のような存在で、密かに憧れていた人。会えなくなってからも温かな記憶が紗理奈を支えてくれていた。
 だが、孝弘にしてみれば、紗理奈は児童養護施設に居るたくさんの子供の中のひとりでしかないのだろう。
最後に会ってから10年もの月日が流れている。昔の知り合い程度の認識なのは、少し考えれば当然の事だ。
 
 自分の事は自分で解決するしか手立てがない。
 紗理奈は覚悟を決めて、膝をつき頭を下げた。
 
「あの、何年掛かっても必ず返済します。Wワークしてがんばりますので、ローンでお願いします」

 土下座の態勢で懇願する紗理奈へ冷たく低い声が降り注ぐ。

「おい、さっきも言ったが、借金には利息が付くんだよ。本当に一生もんだぞ。少しでも滞ったら、わかっているだろうな」

「はい……。ご迷惑をおかけしないように頑張ってお返しします」

 この先、何年も苦しい生活になるのは、容易に想像できる。
 思い描いていた平凡な暮らしが遠のいて行くようで、ジワリと涙が浮かび、鼻の奥がツンとしてくる。
 それでも泣かないように紗理奈はグッと歯を食いしばった。
 
 
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