人生終了のお知らせが届きました
孝弘の手がスッと伸び、紗理奈の頬に伝う涙をそっと拭う。
「岩井社長と話しを付けた。だから、もう大丈夫だ」
「えっ……?」
孝弘に冷たく突き放されたと思っていた紗理奈は、孝弘の言葉を飲み込めずにいた。
「妹みたいな紗理奈が泣いているのは落ち着かない。だから、俺が借金を建て替えてやるよ」
いきなり孝弘に抱き起こされ、紗理奈は訳が分からず、はわわな状態だ。あまりの急展開に、ポカンと口を開けたまま、目を丸くした。
すると、紗理奈を見つめる孝弘の切れ長の瞳が、フッと優しく弧を描く。
「その代わり、返し終わるまで逃がさないからな。覚悟しろ!」
紗理奈を覗き込む孝弘の瞳は、昔と同じように優しい色をしていた。
紗理奈にとって、幼い頃から憧れのヒーローだった孝弘。その孝弘が地獄に落ちる寸前で、掬い上げてくれたのだ。
嬉しさを抑えきれなくなり、思わず孝弘の首に腕を回し、抱きついてしまう。
「タカ兄!ありがとう」
感謝を伝えたくて抱き着いたものの、孝弘の広い肩幅や自分を支えているたくましい腕、そして、二人の近い距離に紗理奈は落ち着かない気持ちになる。
10年ぶりに会った孝弘は、素敵な大人の男性になっていたのだ。