人生終了のお知らせが届きました

悪いヤツに騙されるぐらいなら、俺のところに来い

 窓の外、街の明かりが後ろに流れていく。
 孝弘の運転する車の助手席に座った紗理奈は、やっと気持ちが落ち着き、ホッと息を吐き出した。

「タカ兄、ありがとう。何年掛かっても必ずお金は返すから……迷惑掛けてごめんなさい。それと、私に出来る事があれば、何でも言って! 」

孝弘は、楽しそうにクッと口角を上げた。その横顔は、彫りの深い顔に陰影が付き大人の色気が漂っている。

「へぇー、何でもねぇ」

「うん、私に出来る事なら何でもする」

「……そう言う事を軽はずみに言うな。後で後悔するぞ」

ちょうど、赤信号で停まったタイミング。孝弘の手が伸びて来て、クシャッと紗理奈の頭を撫でた。
その大きな手は、児童養護施設で泣いていた時に慰めてくれた、昔と変わらない優しさだった。
 
 信号が青になり、孝弘は節のある大きな手をハンドルに戻す。
 触れられた温かさと、それが離れていく寂しさが相まって、紗理奈はまだ感触の残る髪へ自分の手を添えた。

「もう、子供あつかいして……」

「オマエなんか、俺からしてみたら世間知らずのおこちゃまだよ。だから、悪いヤツに引っかかるんだ」

 その言葉に、むぅっと頬を膨らませる紗理奈の様子に、孝弘は目を細めた。 
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