人生終了のお知らせが届きました

　車は緩やかな坂を上り、『ハイツ南風』という年季の入ったボロアパートの前に停まる。

「お前、このアパートで間違いないのか……？」

　孝弘は、呆れ顔で建物を見上げた。
　それもそのはず、昭和の時代に建てられた築ン十年の2階建てアパートだ。
　鉄の外階段の手すりには錆が浮いている。部屋のドアも昔ながらのシリンダー錠で、ピッキングも容易く、若い女の子が住むにはセキュリティーに不安がありすぎる造りだ。

　あまりにボロい住まいを孝弘に見られてしまい、いたたまれない気持ちの紗理奈だったが、ココで暮らしているのは事実なのだ。いまさら取り繕う事も出来ない。

「うん。タカ兄、送ってくれてありがとう」

　今日は、いろいろな事があって、紗理奈はヘトヘトになっていた。このまま、布団にうっつぶして寝てしまいたい。
　借金返済は、今度ゆっくり相談させてもらうつもりだ。
　だが、紗理奈の思惑とは裏腹に孝弘はニヤリと含みのある笑みを浮かべる。

「このまま、家に帰って”ハイ終わり”って訳にはいかない」

「えっ？」